とびなたを持ち歩くには欠かせない入れ物。一緒に手のこを入れて、急峻な山を持ち歩く。自分の持ち山でなく、他人の持ち山でも杉や檜に藤つるや葛のつるが巻きついているのを発見したときは、ためらいなく、切り落とす。それは巻きつかれた木は必ず倒木するからだ。そしてその木が枯れてしまう
のを見過ごすことができないからだ。それは山で生活する山男には忘れてはならないエチケットでもある。そのために杉やまや檜やまを歩く男は必ずとびなたやさやなたを持ち歩く。
北陸地方では山仕事をする者は弁当忘れても、なたかご忘れるなと言われたものである。
それほど大事なとびなた+なたかごである。
かごに使用されている材料は葛か”くろもんじゅ”か”はじき”である。
このうち”くろもんじゅ”や”はじき”は雪国のかんじきにもよく使われる。
いずれも弾力性があって、軽く、曲げやすく、山で転倒しても壊れないという条件をみたす木々である。
最近では、ご他聞にもれず、材料を乾燥させるのに、1,2年を要するため、本物を作る職人が減ってきた。 代わりに、やむを得ず、ppバンドでなたかごをつくることも増えている。